平成21年度第62回卒業式 式辞
吹く風に春の息吹が感じられるこの佳き日に、慣れ親しんできた学舎(まなびや)を巣立っていく卒業生の皆さん卒業おめでとう。本日は本校教職員はもとより、ご多用中にもかかわらずご臨席を賜りました来賓各位、保護者の皆様方全てにとって大きな慶びの日であります。特に、我が子の成長を暖かく見守り続けて来られた保護者の皆様方には、慶びも一入と拝察いたします。誠におめでとうございます。
卒業生の皆さん、皆さんが本校で過ごした時間はわずか3年間でした。凝縮された、何にも代え難い、これほど貴重な時間はなかったはずです。入学時のあどけなさも、ひき締まった大人の容貌へと変わりました。そこに成長した姿をみることができます。
しかし、もっとも大きな成長の証は、一人一人の内面にみずみずしい若い木となって育っています。自ら蒔いた種が芽を出し、根を張り太い幹となり「未来という高く広い空」に向かって勢いよく成長を始めています。頭を悩まし真剣に取り組んだ学習や人間関係と強靱な心を育てた部活動、クラスの団結と互いの信頼を再確認した梅苑祭、そして辛く苦しいときに受けた暖かい父や母、そして友達の励ましのことば、それらは全て皆さんの成長に欠かせないものでした。今、3年間を静かに振り返ってみて欲しい。多くの人と出会い共有することができた豊かな時間がどれほど貴重で素晴らしいものであったかわかるはずです。
皆さんは、自らが成長すると同時に様々な活動を通して、諸先輩がそうであったように本校に大きな貢献をし、福高生の志気を大いに高めてくれました。心から感謝しています。
皆さんが生まれたころ、第2次世界大戦後にベルリンに築かれた東側世界と西側世界を分断する壁が崩壊しました。アメリカ・ソ連という2つの超大国が世界の多くの国々をそれぞれの陣営に組み入れ、対立してきた冷戦の構図が終わりを告げました。僅か20年程前の出来事です。このことは良きにつけ悪しきにつけその後の世界に大きな影響を与えました。皆さんの両親の世代は誰もが、この歴史的事実を自分の目で見て、その後の世界の変化を体験してきました。しかし、皆さんは今、その事実と意味を教科書の中で歴史上の出来事として学んでいます。世界は僅か10年、20年前の出来事さえも遠い過去の歴史的事実としてしまうほど激しく早く変化しています。
今後も、世界や日本は変化の速度をもっと速めるでしょう。どのように変化するか想像することは極めて難しい。皆さんはこのような予測し難い社会で中心的な役割を果たして行くことになるのは確かです。傍観者的立場ではなく、自分は何ができるのか、自ら考え、自から判断し、自ら行動することが強く求められるはずです。
また、これからの社会は今以上に、緊張を強いられるような社会になるかも知れません。そのような社会で常に緊張に曝されると人の心は壊れてしまいます。人生をより彩り豊かなものにするためには、身の回りのささやかな出来事にも共鳴する、柔らかな心も大事にしなければなりません。春のそよ風を感じ何事かに胸をときめかせたり、秋の草むらにかすかな虫の音を聴き、物思いにふけることも大事です。美しい花を見て、あるいはバイオリンの音色に体全体が震えるような感動を覚える豊かな感性も大切です。また、この3年間は常に自分の隣に誰かがいてくれたように、「人の隣には常に人が居る」という大切な事実についても意識して欲しいと思っています。
卒業生の皆さん、より良い未来を自分たちの力で築いていくために、視線を遠くに放ち、今後も貪欲に幅広く、深く学び続けて下さい。「為すべきを為し、為すべからざるを為さず」。その上で、卒業生一人ひとりが「花咲きみのりて世のためたたむ」を実現することを心から願っています。
式場の全ての皆様と共に、卒業生の未来に幸多かれと願い式辞とします。
平成22年3月1日
福島県立福島高等学校長 新井田 大